ことば
「情けは人のためならず」の本当の意味は?
励ましでもよく登場する「情けは人のためならず」。いい意味なのは分かるのに、「人のためにならない」だっけ、と一瞬迷う人も少なくありません。
「情けは人のためならず」の意味として、より本来の意味に近いのはどちらでしょうか。
解説
正解は「人にかけた情けは、巡り巡って自分に返ってくる」。
本来の意味は「人にかけた情けは、巡り巡って自分のもとに返ってくる」。「人のためにならない」という解釈は、本来とは違う意味とされています。
ポイントは「ためならず」の読み解き方です。
一般に、ここでの「ならず」は「為(ため)なり」という断定の言い方に打消しが付いたもので、「〜のためではない」という意味だと説明されます。現代語の「ならず(成らない・だめになる)」と取り違えると、「人のためにならない=甘やかしになる」という解釈が生まれやすいと言われます。
本来は「人のため(だけ)ではない、巡って自分のためでもある」というニュアンスで、他者への善意は最終的に自分にも返ってくる、という励ましの言葉として長く使われてきました。
由来には諸説あり、鎌倉時代の説話・教訓の中に同様の言い回しが見られるとされるほか、新渡戸稲造の著作で引用された例も知られています。文化庁の「国語に関する世論調査」では、本来の意味で理解している人と「人のためにならない」と受け取る人の割合がほぼ拮抗していた年度があり、また年代によって解釈の傾向が分かれていたとされ、意味を取り違えやすい代表例としてしばしば取り上げられます。
日常で使うなら、誰かを手伝ったあとに「結局は自分にも返ってくるから」と気楽に構える言葉として捉えると、本来のニュアンスに近づけます。たとえば後輩のフォローをためらう場面で、「情けは人のためならず、と言うし」と添えれば、本来の意味なら「やっておこう」という後押しになります。
一方で「相手のためにならないから手を貸さない」という意味で使うと、本来とは逆方向に伝わってしまうので注意が必要です。両方の解釈が世間に広まっている言葉なので、会話で使うときは「巡り巡って自分のためにもなる、という意味で」とひとこと添えると、本来とは逆の意味に取られずにすみます。
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