「なし崩し」の本来の意味は? ことば

「なし崩し」の本来の意味は?

「なし崩し的に始まった」と書かれていると、どこかうやむやな印象を受けますよね。日常では少し悪い意味で使われることもある言葉です。

Q

「なし崩し」の本来の意味として、もっとも近いものは次のうちどれでしょうか。

A.

解説

正解は「物事を少しずつ片付けていくこと」。

本来の「なし崩し」は、物事を少しずつ片付けていくこと。借金を分割して返していくような、計画的・継続的な行為を表す中立的な言葉です。

漢字では「済し崩し」と書きます。「済す」は「貸し借りなどを清算する」「返済する」という意味の動詞で、借金を一度に返すのではなく、少しずつ返済して残額を減らしていく様子から生まれた表現だとされています。

江戸時代の文献にも見られる古い言葉で、もともとは悪い意味を含まず、計画にそって着実に進めるニュアンスを持っていたと言われます。たとえば「借金をなし崩しに返していった」「たまった仕事をなし崩しに片付けた」のように使うのが本来の形です。

一方、現代では「なし崩し的に同棲が始まった」「なし崩しにルールが変わった」のように、「うやむやな成り行きで」という意味で使われることが増えています。文化庁の「国語に関する世論調査」(平成29年度)でも、本来の意味で理解していた人は2割ほどにとどまり、「なかったことにする」など本来とは異なる意味で受け取る人が6割を超えたとされ、意味の揺れが進んでいる言葉のひとつと言えそうです。

この言葉を使うときは、読み手がどちらの意味で受け取るかを意識すると安心です。「少しずつ片付ける」という本来の意味で使うなら、文脈で清算・分割のニュアンスが伝わるかを確認してから残すのが無難です。

逆に「うやむや」「はっきりしないまま進む」を伝えたいときは、無理に「なし崩し」を使わず、文字どおり「うやむやに」「成り行きで」「いつのまにか」と書いたほうが誤解なく届きます。どちらの意味も社会的に通用しつつあるため、明確な誤りと言いきるより、相手や場面に合わせて言い換えを選ぶと安心です。

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