ことば
誤用しがちな日本語10選 第2弾|「失笑」「姑息」ほか
話していて、「この言葉、本当はどういう意味だったかな」と手が止まることがあります。多くの人が使ううちに、もとの意味から少しずつ離れていった言葉たち。以前の「誤用しがちな日本語10選」に続く、その第二弾です。
ここでの「本来の意味」は、辞書や調査での整理を指すもので、別の使い方をしている人を責めるためのものではありません。言葉は動いていくものなので、答え合わせというより、いまの立ち位置をたしかめるくらいの気持ちで読んでみてください。並べたのは、文化庁「国語に関する世論調査」などでも取り上げられてきた十語です。
01意味が逆に伝わりやすい言葉
まずは、本来の意味と、よく使われる意味がほぼ反対になっている言葉から。会話が一見成り立ってしまうぶん、行き違いに気づきにくいのが厄介なところです。
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琴線(きんせん)に触れる
本来は「心の奥にある感じやすい部分に触れて、深い感動や共鳴を覚える」という意味。心の琴の糸が鳴る、という美しいたとえです。「相手の怒りを買う」という意味で受け取る人も多いと文化庁の調査で報告されていますが、こちらは「逆鱗(げきりん)に触れる」との混同から広まったと見られています。ほめたつもりの言葉が正反対に伝わりかねない、注意したい一語です。
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姑息(こそく)
本来は「その場しのぎ」「一時のがれ」という意味。「姑息な手当て」といえば、根本を治さず、とりあえずしのぐ処置を指します。「卑怯(ひきょう)な」という意味で使う人のほうが多いという調査結果もありますが、もとは「ずるい」という価値判断を含む言葉ではありませんでした。
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御の字(おんのじ)
本来は「十分にありがたい」「大満足」という意味。「これだけもらえれば御の字だ」といえば、大いに満足している状態です。「まあ納得できる」「一応よしとする」くらいの控えめな意味で使われることもありますが、もとはもっと強い満足を表す言葉でした。
02気持ちや様子がずれて伝わる言葉
次は、人の感情や様子を表すのに、もとの情景とは別のニュアンスで広まった言葉です。
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失笑(しっしょう)
本来は「おかしさをこらえきれず、思わず吹き出してしまう」こと。笑いを失うのではなく、つい笑ってしまう様子を指します。「あきれて笑う気にもなれない」という意味で使われることが増えていますが、字面の印象とは裏腹に、もとは実際に笑う場面の言葉でした。
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憮然(ぶぜん)
本来は「思いどおりにいかず、失望してぼんやりするさま」。がっかりして立ちつくすような様子です。「憮然とした表情」を「腹を立てて不機嫌な様子」の意味でとらえる人が多いと調査で報告されていますが、もとは怒りよりも落胆に近い言葉でした。
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破天荒(はてんこう)
本来は「これまで誰も成しえなかったことを、初めてやってのける」という意味。前例を破る快挙を指す言葉です。「豪快で型破りな性格」の意味で使われることが多いものの、もとは人柄ではなく、成し遂げた出来事のほうを指していました。
03使いどころを外しやすい言葉
最後は、意味そのものより「どの場面で使うか」でつまずきやすい言葉です。
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割愛(かつあい)
本来は「惜しいと思うものを、思いきって手放す・省く」こと。「愛」を「割く」と書くとおり、心残りを含んだ言葉です。単に「いらないから省く」という意味で使うのは本来の使い方とは少しずれる、とされます。惜しくないものには、本来は使いません。
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さわり
本来は「話や曲の、いちばんの聞かせどころ・要点」。「話のさわりだけ教えて」といえば、本来は要点を教えて、という意味になります。「最初の部分・出だし」という意味で使う人が多いと調査で報告されていますが、もとは「頭」ではなく「山場」を指す言葉でした。
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他山の石(たざんのいし)
本来は「他人の良くない言動も、自分をみがく助けになる」という意味。よその失敗を見て我が身を正す、という使い方が元です。「立派な人を手本にする」という良い意味で使うのは誤りとされ、目上の人の言動に対して使うと失礼にあたることもあります。
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閑話休題(かんわきゅうだい)
本来は「余談はここまでにして、本題に戻す」という切り替えの言葉。「それはさておき」にあたります。話を脇道にそらすときの合図と取り違えられることがありますが、向きはむしろ逆で、横道から本筋へ戻すための言葉です。
04意味を知ったあとに、どう使うか
本来の意味を知っても、明日から全部を言い換える必要はありません。相手が別の意味で受け取りそうなときだけ、ひと言そえたり、別の言葉に置きかえたりすれば十分です。
「姑息」を「ずるい」の意味で書きかけて、ふと手が止まる。この十語は、その一瞬のための答え合わせです。言葉の意味は時代とともに動きます。それでも、もとの意味を知っている人の文章には、言葉を選んだ跡が残ります。
出典:文化庁「国語に関する世論調査」および国語辞典の一般的な記述をもとに作成(2026年8月時点)。言葉の意味や用法の広がりは変化するため、最新の調査結果もあわせてご確認ください。
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