教養・雑学
熱中症警戒アラートとは?──「特別警戒」との違いと、まだ鳴らない最強の知らせ
連日のように「熱中症警戒アラート」がニュースで読み上げられる夏。すっかり耳になじんだ言葉です。
その一段上には、「熱中症特別警戒アラート」という、めったに聞かない知らせもあります。記録的な暑さだった2024年も2025年も、これは全国で一度も発表されませんでした。
この記事でわかること
01「暑さ指数」は、気温とは違う
熱中症警戒アラートの土台になっているのは、「暑さ指数(WBGT)」という数字です。ふだんの天気予報で見る気温とは別のもので、気温に加えて、湿度と、地面やアスファルトからの照り返し(輻射熱)を組み合わせて出します。環境省によると、この三つのなかで暑さ指数への影響がもっとも大きいのは、湿度だとされています。
同じ34度でも、からっと乾いた日と、じめじめした日とでは、体への負担がまるで違います。気温がそれほど高くなくても、湿度が高ければ汗が蒸発しにくく、熱が体にこもりやすい。「今日は気温のわりに苦しいな」という感覚は、この指数のほうがうまく言い当てているのかもしれません。
02警戒アラートは「33」で出る
熱中症警戒アラートは、環境省と気象庁が出しています。都道府県のなかにある暑さ指数の観測地点のうち、どこかひとつでも、翌日の最高の暑さ指数が33に達すると予測されたときに発表されます。タイミングは前日の午後5時と、当日の午前5時の二回。「明日は危ない」と、前の晩のうちに知らせてくれる仕組みです。
全国での運用が始まったのは2021年です。年々暑さが増すなかで発表は増え続け、2025年には全国で延べ1,749回にのぼり、過去最多を更新しました。ほぼ毎日、日本のどこかでアラートが鳴っていた計算になります。
熱中症警戒アラートは、我慢の限界を告げる合図ではなく、予定を早めに変えるための知らせです。
03その上にある「特別警戒アラート」
この警戒アラートの、さらに上に置かれたのが「熱中症特別警戒アラート」です。2024年から新しく始まりました。こちらは、都道府県のなかの観測地点が「どこかひとつ」ではなく「すべて」で、翌日の暑さ指数が35以上になると予測されたときに出ます。発表は前日の午後2時です。
意味あいも一段重くなります。過去に例のない危険な暑さで、ふだんどおりに過ごしていても健康に重大な影響が出かねない、という警告です。この知らせが出た日には、市町村が冷房の効いた施設を「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」として開放し、誰でも涼みに入れるようにする備えも用意されています。
04いちばん強い知らせが、まだ鳴らない
ところが、この特別警戒アラートは、制度が始まってから一度も発表されていません。あれほど暑かった2024年も、熱中症の救急搬送が相次いだ2025年も、発表はゼロのままでした。
理由は、発表条件の厳しさにあります。都道府県の「すべての」地点で35以上、というのがハードルです。平地が危険な暑さでも、同じ県内にある標高の高い観測地点までは35に届かない。そのために、条件を満たしきれない日が続きました。環境省は2026年から、標高が高いなどの理由で指数の上がりにくい13県の24地点を判定から外し、実態に近づける形で基準を見直しています。
05我慢の合図ではなく、切り替えの合図
暑さ指数も、二つのアラートも、体の外にある温度計を、誰かが代わりに読んでくれているようなものです。33、35という数字は、そのまま「もう気合いでしのぐ段階ではない」という目安に置き換わります。
アラートが出た日は、屋外の予定をずらし、エアコンをためらわずに使う。ニュースで名前を聞いたら、我慢の目盛りではなく、行動を切り替える合図として受け取る。数字がわざわざ言葉になって届くのは、そのためです。
出典:環境省「熱中症予防情報サイト」、気象庁「熱中症警戒アラート」ほか公的機関の公表情報をもとに作成(2026年7月時点)。発表の基準や運用は変更される場合があるため、最新情報は環境省・気象庁の公式サイトをご確認ください。体調に強い異変を感じたときは、我慢せず医療機関にご相談ください。
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