教養・雑学
3決とは?──W杯の三位決定戦はなぜあるのか
準決勝で敗れた2チームが、数日おいてもう一度ピッチに立つ。優勝でも準優勝でもない、「3位」を決めるための試合です。
優勝が決まる大会で、負けたチームどうしがなぜまた戦うのか。考えるほど、少し不思議な位置にある一戦です。
この記事でわかること
01準決勝で敗れた2チームが戦う試合
ワールドカップは、ベスト4が出そろうと準決勝を戦います。勝った2チームは決勝へ進み、優勝と準優勝を争います。三位決定戦は、この準決勝で敗れた2チームが、決勝の直前にもう一度ぶつかる試合です。ニュースや実況では「3決(さんけつ)」と略して呼ばれることもあります。
勝てば3位、負ければ4位。順位を1つ決めるためだけの、大会で最後から2番目に行われる試合です。優勝トロフィーはかからないまま、この一戦は多くの国際大会で続けられてきました。
02「消化試合」でも続けられる理由
優勝が決まる大会で、なぜ3位まで決めるのか。理由はひとつではありません。まず、大会の記録として3位と4位をはっきり分ける必要があります。国のサッカー史に「ベスト4」ではなく「3位」と刻めるかどうかは、当事者にとって小さくありません。
興行の面もあります。世界が注目する舞台での一戦は、放送も観客も大きく動きます。あと一歩で決勝を逃した強豪の試合をもう一度見られる枠として、大会の側にも価値があります。
選手にも事情があります。準決勝で負けたまま大会を去るのと、最後に勝って銅メダルを手にして終わるのとでは、後味が違います。悔しさの残るチームに、もう一度だけ勝つ場を用意する試合でもあります。
実際、近年のワールドカップの三位決定戦はよく点が入ります。2002年はトルコと韓国で3対2、2010年もドイツとウルグアイで3対2、2014年はオランダがブラジルから3点を奪いました。順位のほかに失うものが少ないぶん、守りより攻めに針が振れやすい一戦です。
03廃止した大会もある
三位決定戦は、どの大会でも当たり前にあるわけではありません。ヨーロッパの国別対抗戦であるUEFA欧州選手権(ユーロ)は、1980年大会を最後に三位決定戦を取りやめています。その最後の一戦は、チェコスロバキアがイタリアをPK戦の末に下した試合でした。
理由としてよく挙げられるのが、準決勝で敗れた直後のチームには、この試合を戦う動機が持ちにくい、という点です。優勝を逃した疲れと落胆のなかで、順位だけを争う試合の強度はどうしても上がりにくい。三位決定戦は、もう一度勝てる場でもあれば、戦う意味を見つけにくい試合でもあり、大会ごとに扱いが分かれてきました。ワールドカップは、いまも実施を続けている側にあたります。
04第1回大会には、公式の3位決定戦がなかった
意外なことに、1930年の第1回ワールドカップには、正式な三位決定戦がありませんでした。敗れた2チームの3位・4位をどう扱うかは、長らくはっきりせず、のちにFIFAが記録上の順位を定めたと伝えられています。
三位決定戦がほぼ毎回組まれるようになったのは、第2回の1934年大会以降とされています。大会の形が整っていくなかで、「3位も決めておく」という運用が定着していきました。いまでは準決勝の数日後、決勝の前日に置かれるのが通例で、大会終盤の見慣れた一戦になっています。
05銅メダルの色と、負けの終わらせ方
三位決定戦に勝つと、銅メダルが渡されます。一度は下を向いたチームが、最後に勝って表彰台に上がる。優勝チームのほかに、勝って大会を終えられるチームを生む、ただひとつの試合です。
この「勝って終わる」効果には、心理学の裏づけもあります。コーネル大学のメドベックらが1992年バルセロナ五輪の中継映像を集め、順位表示を隠し音声を消したうえで選手の表情を10段階で評定してもらったところ、競技直後の銅メダリストは平均7.1、銀メダリストは4.8。表彰台の上でも、銅のほうが幸福そうに見えたと報告されています。
銀は「金だったかもしれない」と上を見て、銅は「メダルなしだったかもしれない」と下を見る。同じ表彰台でも、頭の中で比べている相手が違うわけです。準決勝で敗れた2チームに「勝って銅で終わる」道を残す三位決定戦は、この心理とちょうど噛み合っています。
優勝の物語のかげで、あまり語られることはありません。それでも、勝って大会を去りたいチームにとっては、意味のある90分です。大会が終わったあとの順位表の3番目には、そういう試合の跡が残っています。
本記事はサッカーの国際大会における三位決定戦の一般的な解説を目的としたものです。記載内容はFIFA・各連盟の公表情報などをもとにした2026年7月時点の整理です。大会方式や日程は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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