甲子園はなぜ「甲子」園?──球場の名前と干支の話 教養・雑学
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甲子園はなぜ「甲子」園?──球場の名前と干支の話


夏になると、聞かない日はないほどの言葉です。「甲子園」。高校野球の代名詞であり、大きな球場の名前でもあります。

けれど「甲子」とは、いったい何のことでしょうか。動物の名前でも、もとの地名でもありません。この名前は、昔の暦から来ています。

01甲子園ができたのは1924年

阪神甲子園球場が完成したのは、1924年(大正13年)です。全国から中等学校(いまの高校)の野球チームが集まる大会が年々人気を集め、より大きな会場が求められたことが、建設の背景にありました。できた当初の正式な名前は「甲子園大運動場」。当時としては桁外れに大きな球場で、夏と春の高校野球の舞台として、いまも使われ続けています。

球場の年表によると、竣工式が開かれたのは1924年8月1日の朝です。式のあとに行われたのは野球ではなく、阪神間の小学校から集まった2,500人の児童による体育大会でした。日本一の野球場のこけら落としが子どもたちの運動会だったというのは、少し意外な出発点です。

名前を決めるにあたって手がかりになったのが、この「1924年」という年でした。当時の暦の考え方では、この年に特別な意味があったのです。

02その年が「甲子」の年だった

昔は、年を数えるのに「十干十二支(じっかんじゅうにし)」という組み合わせを使っていました。十二支は、子・丑・寅…とおなじみの十二の動物。十干は、甲・乙・丙・丁…と続く十の記号です。契約書で当事者を「甲」「乙」と書くのも、この十干で順番を示す使い方の名残です。

この二つを組み合わせて、その年の名前とします。1924年は、十干の最初「甲(きのえ)」と、十二支の最初「子(ね)」が重なる年でした。合わせて「甲子」。訓読みなら「きのえね」、音読みなら「こうし」で、甲子園の読みは後者から来ています。球場が「甲子園」と名づけられたのは、この年の呼び名をそのまま採ったからです。

03甲子は60通りの最初で、60年で一周する

十干(10種類)と十二支(12種類)を組み合わせると、全部で60通りの呼び名ができます。そのいちばん最初、1番目にあたるのが「甲子」です。十干の頭と十二支の頭が、そろってスタートに立つ年。だから甲子は、新しい周期の始まりとして、昔から縁起のよい年とされてきました。甲子園という名前は、すべての始まりにあたる年に生まれた球場、という縁起をそのまま背負っています。

この60通りは、一年ごとにひとつずつ進み、使い切るとふたたび甲子に戻ります。干支が一周するのに、ちょうど60年かかるということです。1924年の前に甲子がめぐってきたのは1864年、次は1984年、そのまた次は2044年になります。60歳の誕生日を「還暦(かんれき)」と呼び、赤いものを贈って祝う習わしも、ここから来ています。生まれた年の干支に、60年かけて「還(かえ)る」。甲子園の名前と還暦の赤は、同じ60年周期の暦から生まれた、遠い親戚のような言葉です。

04蔦と銀傘、100年目の夏

この球場は、名前だけでなく姿にも時間を刻んできました。外壁を覆う蔦は、開場した1924年の冬に植えられたのが始まりです。2006年のリニューアルでいったん伐採されたものの、各地の学校へ株分けされていた蔦が2009年に「里帰り」して再び植えられ、いまも外壁に沿ってツルを伸ばしています。

内野席を覆う大屋根の「銀傘(ぎんさん)」という愛称は、1951年にジュラルミン製の屋根として復活したときに生まれました。銀色に光る傘。名前は暦から、姿は蔦と銀傘から。甲子園の風景は、こうして少しずつ積み重なってきたものです。

2024年8月1日には、開場からちょうど100年を迎えました。60年で一周する干支の暦でいえば、一巡りして、さらに半分あまり進んだ計算になります。

05名前に暦を刻んだ球場

甲子園は、地名や創業者の名前ではなく、その年の暦の呼び名を名前にした球場です。いまは西暦で年を数えるのがふつうですが、当時は十干十二支が暮らしのなかで生きていて、その最初の年に開いた球場に、めでたい呼び名をそのまま重ねました。

テレビから聞こえてくる「夏の甲子園」のあの二文字は、1924年という年の呼び名そのものです。暦のいちばん最初の名前が、100年あまりたったいまも、夏のたびに呼ばれています。

本記事は甲子園球場の名称の由来と暦に関する一般的な解説を目的としたものです。記載内容は阪神甲子園球場の公表情報や暦の一般的な解説をもとにした2026年7月時点の整理です。細部には諸説がある場合があるため、詳しくは公式の情報もあわせてご確認ください。

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