心理学
帰省ブルー、なぜ実家で疲れる?──「気の張り」の心理学
実家に帰ると、特に何をするでもないのに、なぜかぐったり疲れる。怠けているわけでも、家族が嫌いなわけでもないのに、体が重くなる。そう感じたことのある人は、少なくありません。
この「帰省ブルー」と呼ばれる疲れの出どころをたどっていくと、「気の張り」という、昔からよく知られた心の動きに行きあたります。
01実家で疲れるのは、なまけではない
くつろげるはずの実家で疲れると、「自分は薄情なのだろうか」と感じてしまうことがあります。けれど、家族との時間で気をつかい、それでいて疲れるのは、多くの人に起こるふつうの反応です。帰省シーズンのたびに、同じ声が話題になるのがその証拠です。
気心の知れた相手であっても、いえ、近しい相手だからこそ、期待に応えたい、心配をかけたくないという思いが働きます。その思いが、知らないうちに心と体を張りつめさせています。気をつかわずにいられる相手なら、そもそも疲れません。疲れるのは、その関係をちゃんと大事にしたいと、心のどこかで思っているからです。
02「気の張り」はなぜ起きるのか
実家に帰ると、いつのまにか子どもの頃の自分に戻っている、と感じることがあります。親の前では「しっかりした子」「手のかからない子」という昔の役回りに、無意識にすっと入ってしまう。ふだんの生活で背負っている大人の自分と、実家で求められる過去の自分。この二つの間で、静かに気が張ります。親の何気ないひと言に、昔と同じ姿勢で身構えている。きょうだいの近況を聞きながら、頭の中では自分と並べている。もう大人になったはずなのに、家のなかの立ち位置だけは昔のまま戻ってくる。この「時間の巻き戻し」が、実家という場所の疲れをつくります。
言葉にならない気づかいも重なります。誰かの機嫌をうかがう、話題を選ぶ、良い距離を保とうとする。ひとつひとつは小さくても、それが朝の食卓から夜のテレビの前まで、何日も続けば、確実に消耗していきます。
03緊張がゆるむと、疲れが出る
張りつめていたものがふっとゆるむと、それまで感じずにいた疲れが、一気に表に出てきます。旅先から帰った翌日にどっと疲れが来るのと、似た仕組みです。実家に着いてしばらくしてぐったりするのは、体が「もう気を張らなくていい」と判断した合図でもあります。急に眠くなったり、ぼんやりしたりするのも、同じ合図のうちです。
実家で出る疲れは、家族が嫌いなのではなく、気を張っていた心と体がゆるんだ自然な反応です。
04「ひとり時間」を先に確保する
張りっぱなしを防ぐには、ゆるめる時間を最初から予定に入れておくのが役立ちます。三十分でかまいません。近所を散歩する、コンビニまで歩く、部屋で少し横になる。家族から物理的に離れる時間を、毎日ひとつ挟んでおく。
「せっかく帰ったのに」と気がひけるかもしれませんが、ひとりの時間をはさむほうが、家族と過ごす時間もおだやかになります。良い時間を保つための、小さな間の取り方です。完全にひとりになれなくても、洗い物を買って出て台所に立つ、買い物を引き受けるといった「用事のあるひとり時間」でかまいません。滞在の日数を最初から短めに組む、思いきって近くのホテルに泊まる、という距離の取り方もあります。帰省の予定表に、休む時間をいっしょに書き込んでおく。予定に入っている休みは、さぼりには見えません。
本記事は一般的な考え方を紹介したものです。気分の落ち込みや疲れが長く続く、日常生活に支障が出るといった場合は、無理をせず、医療機関や公的な相談窓口、信頼できる人への相談も選択肢にしてください。
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