夏休み、何もしたくない自分を責めなくていい 自己理解・性格診断
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夏休み、何もしたくない自分を責めなくていい


せっかくの長い夏休みなのに、何もする気が起きない。やりたかったことリストは手つかずのまま、気づけば一日が終わっている。

SNSを開けば、誰かの充実した夏が流れてきて、自分だけ置いていかれた気がする。その後ろめたさは、特別なことでも、怠けているからでもありません。心のしくみから見ると、むしろ自然な反応です。

01「何もしない」は、回復のための時間

休息は、活動と活動のあいだの空白ではなく、次に動くための準備期間だと考えられています。何もしていないように見える時間も、心と体は静かに回復の作業を進めています。

とくに、忙しい時期を抜けた直後ほど、反動でエネルギーが落ちるのは自然なことです。「休みなのに動けない」のではなく、「休みだからこそ、ようやく止まれている」のかもしれません。動けない自分を責めるほど、回復はかえって遠のいてしまいます。

「休むこと」を予定のひとつとして紙に書いておくと、罪悪感が減るという人もいます。何もしない時間に、ちゃんと名前を与えてあげるイメージです。

02脳が疲れると「動けない」は本当のこと

気力のなさを「気のゆるみ」と片づけてしまいがちですが、脳の側から見ると、もう少し具体的な話があります。集中して考え続けたり、ストレスにさらされる期間が長く続いたりすると、脳は認知的疲労(にんちてきひろう)という状態に陥るとされています。注意を向け続けることや、判断を重ねることに使われるエネルギーが枯渇した状態です。

この疲労があると、やる気の問題ではなく、文字どおり処理のためのリソースが不足しています。「計画を立てようとすると頭がぼんやりする」「なにかを始めようとしても手が動かない」という感覚は、そこから来ていることが多いとされています。脳の疲れは、筋肉の疲れと同じように回復に時間がかかります。

また、「何もしていない」ように見える時間に、脳の一部は活発に動いているとも知られています。内側前頭前野や後帯状皮質などが関わる「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の回路は、ぼうっとしているときや空想しているときにむしろ活性化するとされています。記憶の整理や自己理解、他者の気持ちを想像することに関わっているとも言われます。つまり、ぼうっと過ごしているあいだも、脳は別のしかたで働いているのです。

「何もできていない」ではなく、「脳が別の作業をしている」と捉えるだけで、同じ時間の意味が変わってきます。

03SNSの「充実」は、編集された景色

SNSに並ぶのは、誰かの一日の中から選び抜かれた「良い瞬間」です。退屈だった時間や、何もしなかった午後は、たいてい投稿されません。

つまり、自分の「なんとなく過ぎていく日々」と、他人の「編集された切り抜き」を比べていることになります。これは、完成した映画と自分の楽屋を見比べるようなもの。条件がそろっていない比較で落ち込むのは、もったいないことです。見て苦しくなるなら、その時間だけそっとアプリを閉じてもかまいません。情報から少し離れるだけで、気持ちは静かに戻ってきます。

そもそもSNSは、見ている時間が長いほど「みんな充実している」と感じやすくなる場所です。落ち込みの一部は、自分のせいではなく、画面の作りによってつくられているとも言えます。認知的疲労が残っているときほど、情報が刺さりやすくなるので、意識的に距離を置いてみる価値があります。

04比べるなら、過去の自分と

どうしても誰かと比べてしまうときは、比べる相手をそっと入れ替えてみるのもひとつの手です。他人ではなく、少し前の自分を物差しにすると、見える景色が変わります。

「先週よりは眠れている」「春先よりは気持ちが軽い」。小さな変化に目を向けると、止まっているように見えた毎日にも、ゆっくりとした回復の線が引かれているのに気づけます。他人の夏と並べると足りなく見えるものも、自分の時間軸で見れば、ちゃんと前に進んでいることが少なくありません。

比べる相手が他人だと、ゴールはどこまでも遠くなります。けれど過去の自分が相手なら、ほんの少しの変化でも「進んだ」と認められます。物差しを変えるだけで、同じ毎日の見え方が変わります。

05「1日ひとつだけ」の小さな約束

とはいえ、何もしない日が続くと、今度は焦りが増えてくることもあります。そんなときは、全部をやめてしまうより、ごく小さな約束をひとつだけ残しておくと、気持ちが落ち着きます。

「朝に5分だけ散歩する」「夜に本を1ページ読む」。達成のハードルを思いきり下げた約束をひとつ守るだけで、「今日も何もしなかった」という感覚はやわらぎます。夏休みは、何かを成し遂げる期間である必要はありません。よく休めた、と思える夏も、十分に意味のある夏です。

脳が疲れているときほど、大きな目標は逆効果になりやすいとも言われています。「今日できることは、これだけ」と範囲を狭めることで、終わったあとに達成感を感じやすくなります。焦りが出てきたときの小さな約束は、自分との約束でもあります。

秋になって振り返ったとき、よく休んだ夏ほど、力が戻っていることに気づくかもしれません。

06それでも気分が重いときは

こうした過ごし方を試してみても、気分の重さがなかなか取れないことがあります。夏のあいだじゅうずっと気力が出ない、眠れない日が続く、以前楽しめていたことに興味が持てなくなっている、といった状態が長く続く場合は、単なる疲れとは少し違う可能性があります。

「夏だから仕方ない」「怠けているだけだ」と自分を責めるまえに、信頼できる人に話すか、医療機関や公的な相談窓口を頼ることも選択肢に入れてほしいと思います。厚生労働省が案内する「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」(かけた地域の公的相談窓口につながります)や、各都道府県の精神保健福祉センターでは、話を聞いてもらえます。抱えているものを一人で解釈しようとするより、言葉にして誰かに渡すほうが、ずっと早く風通しがよくなることがあります。

SNSに流れる誰かの夏と、自分の夏を並べないこと。何もしなかったように見える一日も、夏のうちの一日には変わりありません。

本記事は一般的な考え方を紹介したものです。気分の落ち込みが長く続く・つらさが強いと感じる場合は、厚生労働省のメンタルヘルス関連の窓口(こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556)や、医療機関・信頼できる人への相談も選択肢にしてください。

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