帰省すると、なぜか少し疲れる──家族との距離の取り方 人間関係・恋愛
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帰省すると、なぜか少し疲れる──家族との距離の取り方


夏休みやお盆の帰省。久しぶりに家族に会えるのはうれしいのに、半日も一緒にいると、なぜか少し疲れている。そんな自分に、少し戸惑う。

仲が悪いわけではないのに、ずっと同じ空間にいると息がつまる。これは冷たさでも親不孝でもなく、距離の問題であることがほとんどです。心理学には、こうした感覚を説明する言葉がいくつかあります。

01「近すぎて疲れる」は、珍しいことではない

ふだんは一人や少人数で暮らしている人ほど、急に家族と長い時間を過ごすと、気疲れしやすくなります。生活のリズムも、ちょうどいい距離感も、もう昔とは違っているからです。実家にいた頃の自分と、今の自分は、同じではありません。

「家族なのに疲れるなんて」と自分を責める必要はありません。むしろ、それぞれが自分の暮らしを築いてきた証でもあります。疲れを感じること自体は、関係が壊れているサインではないのです。まずはその感覚を、否定せずに認めるところから始めると、対処もしやすくなります。

たとえば、夜更かし型の人が早寝早起きの家に戻れば、それだけで生活のテンポはずれます。価値観の違いというより、暮らし方が違うだけです。それが分かると、自分を責める気持ちは薄れます。

02愛着スタイルが、疲れの形を決める

帰省の疲れには、個人差があります。同じ3日間を過ごしても、ほとんど疲れない人もいれば、初日から消耗し始める人もいる。その違いのひとつに、「愛着スタイル(アタッチメント・スタイル)」という考え方があります。

愛着理論は、もともとイギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱したもので、乳幼児期に養育者との間で築かれた関係が、後の人間関係の基盤になるとされています。特定の養育者との結びつきが「安全基地」として機能するかどうかが、成長してからの親しさの感じ方や、近さへの耐性に影響するとも言われています。

成人の愛着スタイルには、大きくわけると「安定型」「不安型」「回避型」などのパターンが知られています。安定型の人は家族との距離が近くなっても比較的揺れにくい傾向があるとされます。一方、回避型の傾向がある人は、親しい相手に囲まれるほど独自の空間を求める感覚が強まりやすく、帰省の閉塞感として表れることがあるとも言われています。不安型の傾向がある人は、家族のひとことに過剰に反応してしまったり、承認を求めながらも疲れていくという経験をしやすいかもしれません。

これらは固定した性格ではなく、関係の文脈によって変わるものだとされています。「自分はなぜこのパターンで疲れるのか」を知るための手がかりとして、愛着理論は参考になることがあります。

03家族システムという見方

家族を「個人の集まり」ではなく「ひとつのシステム」として見る考え方があります。家族システム論と呼ばれ、1950年代以降に家族療法の分野で発展した視点です。

この考え方では、家族の中の誰かの言動は、他のメンバーへの反応として起きているものだとされます。たとえば、親が子どもの近況を根ほり葉ほり聞いてくるのも、距離を縮めようとする親なりの試みであって、どちらが正しいというより、お互いの引き合う力と押し合う力がシステムとして動いている、という見方です。

家族システムには、それぞれに「役割」があるとも言われています。いつも取り持つ側に回る人、場を明るくしようとする人、反論役になりがちな人。帰省するたびに同じポジションに引き戻される感覚は、この役割のパターンが再起動しているからだとも説明されます。実家に着いた瞬間に、いつの間にか昔の自分に戻っていく、あの感じです。

帰省疲れの多くは、個人の性格の問題というより、何十年もかけてつくられた家族のパターンが一気に動き出すことで生じるとも言えます。

このパターンに気づくだけでも、「また同じ流れが来た」と少し引いて見ることができるようになります。システムを変えようとするより、そのパターンに名前をつけて認識する、という段階から始めるほうが、心の消耗は少なくなります。

04「短く・浅く・複数回」で、間をつくる

長時間ずっと同じ部屋にいると、お互いに小さな摩擦が溜まっていきます。そこで効くのが、一回の接触を短くして、回数を分ける考え方です。ひとつの長い時間を、いくつかの短い時間に置き換えるイメージです。

たとえば、朝にいっしょに30分散歩する、昼食を一緒にとる、夕方に少し話す。こうして区切りを入れると、合間に自分の時間が挟まり、気持ちがリセットされます。買い物や用事を口実に、一人になる時間を意識してつくるのもいい方法です。「ずっと一緒」より「こまめに、ほどよく」のほうが、別れぎわの印象もやわらかくなります。

回避型の傾向がある人ほど、こうした「間」をつくることで、関係そのものはむしろ保ちやすくなると言われています。距離を取ることが冷たさではなく、その人なりのペースを守ることだと、自分でも家族でもわかってくると、少し楽になります。

05「答えない」も、ひとつの返事

結婚、仕事、お金、子どものこと。会うたびに同じ質問をされて気が重くなるなら、答えたくない話題への返し方を、あらかじめひとつ用意しておくと楽になります。とっさに困らないよう、心の中で決まり文句を持っておく感覚です。

「ありがとう、今はそっとしておいてほしいな」「その話はまた今度ね」。やわらかく受け止めつつ、それ以上は踏み込ませない。相手も悪気なく聞いていることが多いので、角を立てずにかわすだけで十分です。すべての質問に正直に答える義務はありません。話さないでおくことも、立派な選択のひとつです。

「この話題が来たら、こう返す」とひとつ決めておくだけで、心の身構えは減ります。とっさに言葉が出ないときは、笑顔で「うーん、どうかな」と濁すだけでも十分です。

06相手を変えるより、自分の幅を増やす

親やきょうだいとの関係には、長い時間をかけてできたパターンがあります。それを一度の帰省で変えようとすると、たいていぶつかって、よけいに疲れてしまいます。長年の習慣を、数日で塗り替えるのは難しいものです。

変えやすいのは、相手ではなく自分の受け取り方や対応の幅のほうです。聞き流す、席を立つ、話題を変える。手持ちのカードが増えるほど、同じ言葉に振り回されにくくなります。帰ったあとに「今年はわりと穏やかだった」と思えたら、それで十分ではないでしょうか。完璧に仲良くするより、また会いたいと思える距離を保てたほうが、関係は長く続きます。

家族システムのパターンは、帰省のたびに更新されていきます。今回の疲れを振り返って、次の帰省では、返し方をひとつだけ変えてみる。変えるのは家族ではなく、迎える自分のほうだけでいいのかもしれません。

本記事は愛着理論・家族システム論を含む心理学の一般的な考え方を紹介したものです。これらは研究者によって見解が異なる部分もあり、すべての人に当てはまるわけではありません。家族との関係に強いつらさが続く場合や、日常生活に支障がある場合は、公的相談窓口や心療内科・精神科などの医療機関への相談も選択肢にしてください。

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