ことば
「小春日和」は春じゃない?──季節を取り違えやすい言葉5つ
「小春日和ですね」と言われたら、どの季節を思い浮かべるでしょうか。春らしい響きから、3月や4月のぽかぽか陽気を思い浮かべた人は、決して少数派ではありません。
けれど本来の「小春日和」は、春の言葉ではありません。今回は、小春日和をはじめ、指している季節を取り違えやすい言葉を5つ、まとめて答え合わせしていきます。
この記事でわかること
01「小春日和」は、晩秋から初冬の言葉
「小春」とは、旧暦10月の別の呼び名です。いまの暦でいえば、おおむね11月から12月の初めごろ。この時期の、春を思わせる穏やかで暖かな晴れの日を「小春日和」と呼びます。
文化庁の「国語に関する世論調査」(平成26年度)では、本来の意味である「初冬の頃の、穏やかで暖かな天気」を選んだ人は51.7%。いっぽうで「春先の頃の、穏やかで暖かな天気」と答えた人も41.7%と、4割を超えていました。「春のような」であって「春の」ではない。そこが、この言葉の分かれ目です。
02「五月晴れ」と「五月雨」は、もとは梅雨の言葉
「五月晴れ(さつきばれ)」は、いまでは5月のさわやかな晴天の意味で広く使われています。ただ、もとの「五月」は旧暦の5月、いまの6月から7月にあたる梅雨の時期。本来の五月晴れは、梅雨の合間にのぞく晴れ間のことでした。
同じ仲間が「五月雨(さみだれ)」で、こちらは梅雨の長雨のこと。「五月雨式にすみません」という表現が「切れ切れにだらだら続くさま」を指すのは、降ったりやんだりしながら続く梅雨の雨から来ています。俳句の世界では、五月晴れはいまも夏(梅雨どき)の季語として扱われています。
03「麦秋」は、「秋」の字なのに初夏
「麦秋(ばくしゅう)」は、字面だけ見れば秋の言葉のようですが、指しているのは初夏、いまの5月末から6月ごろです。
種明かしは「秋」という字にあります。ここでの秋は、季節の秋ではなく「実りの時期」の意味。麦にとっての実りの季節、つまり麦の刈り入れどきが麦秋です。米に秋があるように、麦には麦の「秋」がある、というわけです。初夏の風に金色の麦畑が揺れる風景を思い浮かべると、覚えやすいかもしれません。
04「三寒四温」は、もともと冬の言葉
「三寒四温」は、寒い日が3日ほど続くと、そのあと4日ほど暖かい日が来る、という冬の気候を表す言葉です。もとは中国北部や朝鮮半島の、冬に見られる周期を指したとされています。
日本では、春先の「寒くなったり暖かくなったり」を指して使われることが増え、天気予報でも春に耳にすることが多くなりました。誤りと言い切るより「使われ方が変わってきた言葉」ですが、本来は冬の言葉だったと知っておくと、手紙や俳句の季節感がつかみやすくなります。
05ずれの正体は、旧暦と暮らしの変化
5つの言葉に共通するのは、旧暦の季節感のなかで生まれた言葉が、いまの暦と暮らしのなかで少しずつ動いてきた、ということです。暦が変われば、言葉の着地点もずれる。誤用というより、言葉が生きて動いている証拠ともいえます。
それでも、まずは「小春日和は初冬、五月晴れは梅雨の晴れ間」。この2つを押さえておくだけで、季節の挨拶はぐっと確かになります。
出典:文化庁「国語に関する世論調査」(平成26年度)ほかをもとに作成(2026年8月時点)。言葉の意味や由来には、辞書や資料によって異なる説明があります。
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