人間関係・恋愛
父の日に「ありがとう」と言いにくい人へ──気持ちの言語化のヒント
父の日が近づくと、なんとなく落ち着かない気持ちになることはないでしょうか。「ありがとう」と素直に言えたらいいのに、いざ顔を合わせると言葉が出てこない。そんな自分を責めてしまう人もいるかもしれません。
言えないのは、冷たいからでも、感謝がないからでもありません。このページでは、無理に「心からの言葉」をひねり出すのではなく、自分の気持ちをそっと言語化していくためのヒントを整理します。
この記事でわかること
01「ありがとう」が言いにくいのは、自然なこと
家族や、長く一緒にいる相手ほど、感謝の言葉は口にしづらくなる、ということがあります。近すぎて照れくさい、いまさら言うのも気恥ずかしい、口にした瞬間の空気が想像できてしまう──理由はいくつも重なっているはずです。これは特別な感覚ではありません。
父との関係が、いつもおだやかだったとは限りません。すれ違ったまま時間が過ぎた人、ほとんど話さなくなった人、複雑な思いを抱えたままの人もいるでしょう。そういう関係で「ありがとう」がすっと出てこないのは、むしろ当然のことかもしれません。
大切なのは、言える・言えないで自分を採点しないことです。言葉が出ないことと、気持ちがないことは、別のものだからです。
02父への気持ちを、一文に縮めてみる
「ありがとう」が大きすぎて言いにくいときは、その手前にある気持ちを、まず自分のなかで一文に縮めてみると、少し扱いやすくなります。立派な言葉でなくて構いません。むしろ、飾らないほど本当に近づきます。
たとえば、こんなふうに。
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事実を一つだけ書く
「最近、白髪が増えたな」「あの車、まだ乗ってるんだ」。気持ちを言葉にできなくても、目に映った事実なら書けます。気づいている、というだけで十分に気持ちです。
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覚えている場面を一つ思い出す
送ってもらった日、無言で隣にいた時間、何気なくかけられた一言。感謝かどうか分からなくても、覚えている、それ自体が関係の証になります。
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言えなかった言葉に「ことにする」をつける
「本当は心配してたんだと思うことにする」。断定できない気持ちは、無理に確定させなくていい。仮の言葉のままで、自分のなかには置いておけます。
どれも、相手に渡す前の、自分のための一文です。ここで止まっても構いません。
03「伝える」と「書き出す」は別のもの
気持ちを言葉にすることと、それを相手に届けることは、地続きのようでいて、まったく別の行為です。書き出すのは、自分の内側を整理する作業。伝えるのは、相手との関係に踏み込む作業。同じ言葉でも、向かう先が違います。
感情を書き出して整理することは、気持ちの負担をやわらげる手立てのひとつとされています。厚生労働省のメンタルヘルス関連サイトでも、今の気持ちを書いてみることや、つらさをひとりで抱え込まず相談することが紹介されています。まずは誰にも見せないメモから始めて構いません。
言葉は、まず相手に届けるためではなく、自分の気持ちを自分が知るために書いていい。
書いたうえで、渡したくなければ渡さない。それも一つの完結です。書く前と後とで、自分のなかの霧が少し晴れていれば、その時間にはもう意味があります。
04短い言葉ほど、関係を選ばない
もし何かを渡したくなったとき、長く、心のこもった文章である必要はありません。むしろ短いほうが、どんな関係にもなじみやすい、ということがあります。長い言葉は、思いを乗せられる反面、いまの関係の温度と合わないと、お互いに身構えてしまうからです。
「元気にしてる?」の一行。「体に気をつけて」のひとこと。それだけでも、気にかけているという事実は十分に伝わります。「ありがとう」という直球が重いなら、その周りにある軽い言葉から選んでみる、という手もあります。
疎遠な相手なら、無理に近づこうとしなくて大丈夫です。短い言葉は、距離をそのままにしておける言葉でもあります。踏み込まずに、ただ存在を思い出した、と伝えるだけでいい日もあります。
05感謝を競う日ではなく、自分の気持ちを整える日
父の日は、立派な感謝を披露する日ではありません。誰かと比べて、うまく言えた・言えなかったを測る日でもない。むしろ、一年に一度、父という存在に向けて、自分のなかの気持ちをそっと並べ直してみる日、くらいに考えてみると、肩の力が抜けるかもしれません。
言葉が出なくても、それでいい。メモ一枚で終わっても、それでいい。気持ちは、口に出した分だけ存在するわけではなく、気づいて、言葉にしようとした時点で、もう自分のなかに在ります。
「うまく伝える」より「自分の気持ちを知る」。今年は、そんな小さな一歩を、一つだけ持ち帰ってみてください。
本記事は一般的な考え方を紹介したものです。気持ちの整理がうまくいかないときや、つらさが続くとき、安全に不安があるときは、ひとりで抱え込まず、厚生労働省「こころの耳」などの公的相談窓口・医療機関・信頼できる人への相談も選択肢にしてください。