教養・雑学
ナフサって何?──「石油からできるモノ」の出発点をやさしく
ガソリンや物価のニュースで、「ナフサ」という言葉を見かけたことはありませんか。なんとなく石油に関係していそうだけれど、何に使うものなのかは説明しにくい言葉のひとつです。
このページでは、ナフサとは何か、なぜニュースに出てくるのかを、やさしく整理します。一つ分かると、原油や為替の話題が、身の回りのモノにどうつながるのかが見えてきます。
この記事でわかること
01ナフサとは
ナフサは、原油からつくられる、ガソリンに似た軽くて揮発しやすい透明な液体です。石油連盟の説明では、原油を蒸留したときに得られる比較的軽い成分(留分=りゅうぶん)のひとつで、沸点はおよそ35〜180℃とされています。「粗製ガソリン」と呼ばれることもあり、名前のうえではガソリンの親戚のような存在です。
原油はそのままでは使い道が限られるため、製油所で熱して、沸点の違いごとに成分を分けていきます。軽いほうからガス、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油……といったぐあいに分かれていく、その上のほうに位置するのがナフサだとイメージすると分かりやすいかもしれません。
そのまま燃料として使うイメージは薄いかもしれません。ニュースで出てくるナフサは、多くの場合「燃やすもの」よりも「モノの材料になるもの」として語られます。ここが、ガソリンや灯油との大きな違いです。
02何の役に立つのか
ナフサは、石油化学工業の“出発点”にあたる基礎原料です。工場でナフサを高温(およそ800℃以上)に加熱して分解すると、エチレンやプロピレン、ベンゼンといった「石油化学基礎製品」が取り出せます。この分解する装置は「ナフサ分解装置(ナフサクラッカー)」と呼ばれ、石油化学コンビナートの中心的な設備のひとつとされています。
石油連盟によれば、ここからプラスチックや合成繊維(ポリエステルなどの化学繊維)、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの材料が生まれ、さらにパソコン、スマートフォン、家電、自動車部品、衣料品へと姿を変えていきます。一滴の液体が、いくつもの工程を経て、まったく違う形のモノになっていくわけです。
たとえばエチレンはレジ袋やペットボトルの一部に、プロピレンは食品容器や自動車部品に、ベンゼンは合成繊維や塗料の原料に——というように、取り出された成分ごとに行き先が分かれていきます。一つの液体から枝分かれするように製品が広がる、その根もとにあるのがナフサだといえます。
ナフサは、プラスチックなど多くの石油化学製品の出発点のひとつ。だから原油や中東の情勢が、巡り巡って暮らしの中の製品につながります。
03なぜニュースに出るのか
ナフサの価格や入手のしやすさは、原油価格や為替(円安・円高)、産油地域の情勢などに左右されます。原料であるナフサが動くと、そこからつくられる幅広い製品のコストにも影響しうる——だから経済ニュースで名前が挙がります。出発点の値段が動けば、その先につながる製品にも波及しうる、という関係です。
日本では、国内の製油所でつくる「国産ナフサ」に加え、海外から買う「輸入ナフサ」もあり、海外の情勢の影響を受けやすいことが、経済産業省の資料などでも触れられています。輸入が一定の割合を占めるため、為替が円安に振れると、同じ量を買うのにより多くの円が必要になる場面も出てきます。
また、ナフサの値段は化学製品の価格を決めるときの目安としても使われることがあり、業界では取引の基準のひとつとして注目されています。具体的な価格や見通しは時期によって変わるため、ここでは扱いません。
04身近なモノとのつながり
身の回りを見回すと、ナフサからつながる製品は驚くほど多くあります。ペットボトルやレジ袋などのプラスチック、ポリエステルの衣料、家電やスマートフォンの部品まで、もとをたどるとナフサなど石油由来の原料につながるものも少なくありません。
たとえば朝、ペットボトルの飲み物を手に取り、化学繊維のシャツを着て、スマートフォンを操作する——その一つひとつに、石油化学から生まれた素材が関わっている可能性があります。ふだんは意識しませんが、私たちの生活は石油由来の素材にかなり支えられている、ともいえます。
「原油が上がると、いろいろな値段が上がる」と言われるのは、ガソリンだけでなく、こうしたモノの材料にも石油が深く関わっているからです。燃料としての石油だけを見ていると見えにくい、もう一つのつながりがそこにあります。
05言葉が一つ分かると、ニュースがつながる
ナフサは、ふだん手に取ることのない液体ですが、暮らしの中のたくさんのモノの“もと”をたどった先にある存在です。「燃料」というより「材料」と覚えておくと、役割がすっきりします。
原油という大きな話題と、レジ袋やシャツという身近なモノ。一見すると遠く感じる二つを結ぶ中継地点に、ナフサがあると考えると、ニュースの読み方が少し変わるかもしれません。一つの言葉を手がかりに、見えていなかったつながりがほどけていく感覚です。
次にこの言葉を見かけたら、「プラスチックや服の材料のおおもとか」と思い出してみてください。一つの言葉が、原油と暮らしを結ぶ小さな地図になります。
もっと詳しく知りたい人は、こちらも参考になります。
ナフサとは|石油連盟(外部サイトへ飛びます)
本記事はナフサの一般的な解説を目的としたものです。記載内容は石油連盟・経済産業省・資源エネルギー庁などの公開情報をもとにした2026年6月時点の整理で、数値はおおよその目安です。最新の価格や正確なデータは、各公式サイトでご確認ください。