自己理解・性格診断
配属直後がつらい新入社員へ──「自分だけできない」と感じる時の3つの視点
研修期間が終わり、現場に配属された頃。先輩が当たり前のようにこなしている仕事が、自分にはまるでできない。同期と比べて、自分だけ覚えが遅い気がする。そんな夜が、一度はあるはずです。
「自分だけできていない」という感覚は、配属直後にとても起きやすい状態です。けれど、その感覚は事実とは少しズレていることも多い。比べて落ち込む前に、立ち止まって持っておきたい視点が3つあります。
この記事でわかること
01「自分だけ」という感覚の正体
「自分だけできていない」と感じやすい背景には、いくつかの錯覚が重なっています。配属直後は誰もが緊張していて、自分の小さな失敗を必要以上に大きく感じます。一方で、周りの人の失敗は見えにくく、できている部分だけが目に入る。
結果として、「自分の苦戦」と「他人の順調」が並べて見えるので、差が実際より大きく感じてしまいます。これは性格の弱さではなく、最初の数か月に誰もが通る感覚です。
たとえば、同じ会議に出ていても、自分が言いよどんだ場面は一日中思い出すのに、隣の人が言葉に詰まった場面は数分後には忘れている。人は自分に向けた注意のほうが強く働きやすいとされていて、自分の失敗ばかりが記憶に残りやすいのは、ある意味で自然な傾きだと言われています。
もうひとつ、人は周りからどう見られているかを実際以上に気にしがちだ、という指摘もあります。社会心理学では、自分の振る舞いが他人に注目される度合いを過大に見積もる傾向が「スポットライト効果」と呼ばれることがあります。「自分のもたつきは全員に見られている」という感覚も、その延長線上にあるのかもしれません。
「自分だけできていない」と感じている時、たぶん隣の人も同じことを感じています。
02視点1:見えているのは「完成形」だけかもしれない
先輩や上司の仕事を見ると、流れるようにこなしているように見えます。けれどそれは、何年もかけて積み上げてきた「完成形」です。最初に経験する「分からなさ」「もたつき」は、本人もとっくに通り過ぎているので、外からは見えません。
たとえば、先輩が電話口で淀みなく即答している場面。その裏には、過去に何度も言葉に詰まり、メモを作り直し、上司に確認しながら少しずつ型を覚えてきた時間があるはずです。いま見えているのは、その積み重ねの「結果」の部分だけで、途中の試行錯誤は省略されています。
同じように、隣の同期がスムーズに見えても、それは「外から見える部分」だけ。本人の頭の中では「これで合っているのか」と不安が動いているはずです。提出物の見た目が整っていても、提出直前まで何度も書き直していた、ということは珍しくありません。
見えているものと、相手の中で起きていることは、けっこう違います。比べる材料そのものが、もうフェアな比較になっていない、と知っておくだけで、少し肩の力が抜けます。気になる先輩がいたら、思い切って「最初の頃、何が一番大変でしたか」と聞いてみるのもひとつです。完成形の裏側にあった苦戦が見えると、距離が一気に縮まることがあります。
03視点2:「できていない」の中身を分けてみる
「全部できていない」と感じる時、本当に全部ができていないわけではないことがほとんどです。中身を分けてみると、3種類くらいに分けられます。
1つ目は、まだ教わっていないこと。これはできなくても自然で、できないこと自体が問題ではありません。2つ目は、教わったけれどまだ慣れていないこと。これは時間をかけることで、少しずつ慣れていける部分です。3つ目は、自分には合わないやり方で進めていること。これは方法を変える余地があります。
具体的に分けるには、紙やメモアプリに「今日できなかったこと」を箇条書きにして、それぞれに「未習」「練習中」「やり方の問題」と印をつけてみる方法があります。たとえば「議事録が時間内に書けなかった」なら、ショートカットを習っていないだけ(未習)なのか、書く順番が定まっていないだけ(練習中)なのか、そもそも手書きでやろうとして遅いだけ(やり方)なのか。原因が違えば、次の一手も変わってきます。
「全部できない」をこの3つに分け直すだけで、対処の方向が見えてきます。何も分かっていないわけではなく、ただ「今」できないだけ、という景色に変わります。分けてみて「未習」が多ければ、それは能力の問題ではなく、まだ教わる順番が来ていないだけ、ということでもあります。
04視点3:3か月という時間の幅で見る
配属直後の1週間や1か月で「できる/できない」を判断するのは、ほぼ早すぎます。新しい仕事に必要な感覚をつかむまでには、おおむね3か月くらいの時間がかかると言われることがあります。多くの企業で試用期間が3か月程度に設定されているのも、それくらいの幅で見ようという考え方のひとつの表れと言えるかもしれません。
「3か月後にできていればいい」と決めておくと、今日できなかったひとつを引きずらずに済みます。1日単位で見ると右肩下がりに見えても、月単位で見ると、ちゃんと前に進んでいる。たとえば、配属1週目に30分かかっていた作業が、2か月目には10分で終わるようになっていた、という変化は、毎日見ていると気づきにくいものです。
ひとつ試しやすいのは、できなかったことではなく「今日できるようになったこと」を一行だけ書き留めておくこと。小さな前進が積み上がっていく記録は、落ち込んだ夜に読み返すと、思っていたより進んでいたことを教えてくれます。
その時間の幅を持っておくのは、自分を甘やかすことではありません。長い目で見たほうが、結果として早く成長できる、というだけのことです。
05比べる相手は、未来の自分
同期や先輩と比べると、足りないところしか見えなくなります。比べる相手を「過去の自分」「未来の自分」に変えるだけで、自分の進み方が見えるようになります。
1か月前の自分は、今日できることのいくつをできていなかったか。3か月後の自分に、今のうちに渡しておきたいことは何か。比べる対象を時間軸に置くと、自分のペースで進むことが許せるようになります。他人との比較は終わりがありませんが、過去の自分との比較には、必ず進んだ分だけの答えが返ってきます。
もし、つらさが眠れない・食べられないといった形で続くようなら、無理に一人で抱えこまないこと。職場の先輩や上司に「今どこでつまずいているか」を具体的に伝えるだけでも、状況は動くことがあります。話せる相手が社内に見つからないときは、後述の窓口のように、外部に相談できる場所もあります。
「自分だけできていない」感覚は、配属直後の一時的な「視界の狭まり」です。半年前にできなかったことが、今日は当たり前になっている──そのことに気づくために、今日できるようになったことを、一日ひとつだけ書き留めておく。
本記事は一般的な考え方を紹介したものです。深い悩みが続く場合や安全に不安がある場合は、厚生労働省「こころの耳」などの公的相談窓口・医療機関・信頼できる人への相談も選択肢にしてください。
出典
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